モバイルファースト時代のスマートデバイスの技術進化
イライラする操作
PCのアプリケーション開発よりもスマートフォンのアプリケーション開発を先行させるという「モバイルファースト時代」は多くの技術的な進化からもたらされている。
まず指摘できるのが、フリクションレスを実現する機能やサービスだ。「フリクション」(Friction)とは「摩擦」や「軋轢」の意味で、売り上げ増大の機会損失につながるような端末操作の手間や、サービス間の断絶を意味する。
フリクションレスとはつまり「イライラ」がないことだ。
例えば決済ではNFC(Near Field Communication)がPOSレジスターに対応していなかったり、オーダー機能ではクーポン発行が自動的に処理されず顧客にスマホをかざす操作を強いたり、チェックインやナビゲーションではGPSやWiFiが店舗内で使えなかったりすることだ。
フリクションレスを実現する機能
では、どんな機能をスマートデバイスが装備していれば「イライラ」が解消されるのだろうか?
決済では、ウェアラブルなどの他機器連携やBluetoothなどの近接通信だ。オファーではモバイルウォレット、そしてチェックイン・ナビゲーションではBluetooth、可視光通信が。また、ユーザー登録では入力に手間のかかるバーチャルキーボードに代わってカメラを活用することだ。
カメラの活用
カメラの活用では例えば、サービスの利用登録など本人情報の入力に手間がかかる場面でIDカードをスマートデバイスのカメラで撮影し、自動登録。画像認識や文字認識機能を応用することが考えられる。
これはすでに日本では「じぶん銀行」が口座開設アプリで実現している。
モバイルウォレットの可能性
「モバイルウォレット」とは仮想の財布のこと。決済、クーポンやポイントの発行・受け取り、プロモーション情報の提供など多彩なサービスを実現する。
また、「モバイルウォレット」と「NFC」との組み合わせにより、リアル(実店舗)でのサービスに付加価値をつけることができる。
手ぶらショッピングの実現
米国のPayPalの「Beacon」では、スマートフォン+接近検知による”手ぶらショッピング”を実現している。2014年からの提供を予定しているが、米国では「Appleに代わるイノベータ―はPayPalだ」とも言われている。
その仕組みは、どの店で何を購入するかあらかじめスマホに登録しておくと、Beaconの電波をスマホが受信して店舗にチェックイン、代金が支払われ、買い物に来店した人は商品を受け取って帰ることができるので、スマホさえ持っていれば手ぶらでショッピングできる。
変わるリアル店舗の役割
このようにリテールビジネスにおけるスマートデバイスの進歩は、リアル店舗の役割を大きく変えつつある。
米国の銀行の場合、インターネットバンキングの機能が充実するにつれて、モバイルでの利用が倍増しており、逆に店舗への関心は薄れている。
今後は、リアル店舗はローンの申し込みや支援など、時間をじっくりかけて相談する場としての役割が増す一方、モバイルは口座管理や通知など、手軽で迅速さが求められるサービスでの利用に使われるようになるだろう。
参考:
野村総合研究所 「ITロードマップセミナー AUTUMN 2013」藤吉英二氏
じぶん銀行:http://www.jibunbank.co.jp
PayPal:https://www.paypal.jp/jp/contents/start/about/
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