クラウドがもたらす光と影 −生産性アップと情報リスク−
スプリングボードリサーチの行った調査の結果、日本を含めたアジアの約6割の企業がクラウドコンピューティングをすでに導入しているか、導入予定であることが判明している。今やビジネスの世界での成功に不可欠であるかのように見えるクラウドコンピューティング。企業にもたらすその生産性の利点と、同時に存在するリスクについて改めて確認してみよう。
地理的制限がないことによる生産性の向上
すべてのファイル、システム、データに世界中のどこからでもアクセスが可能であるというクラウドコンピューティングの特長は、休止時間を減らし、仕事の連続性や継続性の維持を可能にすることにある。
例えば、ビジネスの世界において外出や出張はつきものであるが、クラウドコンピューティングによって出先でもemailや資料、書類にアクセスが可能であり、報告書提出等も可能となる。
もちろん、従業員の在宅勤務もより現実的な選択肢となる。在宅勤務は従業員のストレスと疲労を軽減し、企業の成功に不可欠な要素である生産性と顧客サービスに関して向上する傾向があると言われている。そして、クラウドコンピューティングによって地理的制限がないということは、従業員にとっても雇い主である企業側にとっても「転勤」を考える必要がないということにもつながる。
クラウドストレージのもたらす利点
クラウドストレージへは、遠方からでも、また、どんなデバイスであっても容易にアクセスでき、共有できる。インターネットに接続が可能でさえあれば、ファイルにアクセスが可能なのだ。加えて多くの場合、非常に大きなファイルであっても閲覧するためにわざわざダウンロードする必要はない。
ハードドライブはいずれ壊れてしまう運命にあり、そのハードドライブに保存してあるデータは常に消失の可能性があると言える。クラウドストレージを用いると、プロバイダはセキュリティ対策を講じており、自動的にバックアップをとり、ユーザーが外部のハードドライブにバックアップを手作業で行う時間を節約してくれる。
しかも、クラウドストレージは安価に利用できることが多いので、企業にとっては大きな魅力となっているのだ。
クラウドコンピューティングのリスク
どのようなものにもリスクというものはつきものであり、クラウドコンピューティングもその例外ではない。
例えば、プライバシーがどのくらい保たれているのか。契約前にはプライバシーに関するポリシーをよく読むことをすすめたい。
インターネットによってアクセスできるので共有が容易である反面、なんらかによりインターネットに接続できなくなった場合、当然のことながらファイルにはアクセスできなくなるだろう。
プロバイダはサーバの保護のためには多大な尽力をつくしているが、ディザスタが起こらないとは言い切れない。ひとたびサーバがダウンした際には、データが消失するかもしれないリスクは常にある。
まとめ
IT分野の進歩はめざましく、クラウドコンピューティングはさらにビジネスの世界に浸透していき、好むと好まざるとにかかわらず、クラウドコンピューティングを利用していくことになるだろう。もちろん、その便利さをビジネスに活かさない手はない。しかし、その便利さの裏側にある上記のリスクも常に認識しておくのを忘れないようにしよう。
また、Bot、 Rootkitやトロイの木馬といったウイルスは現在ではスマートフォンをもターゲットにしている。クラウドコンピューティングを導入し、従業員が自分のデバイスであるスマートフォンやタブレットを用いる場合が多くなってきた場合、IT部門は企業のネットワークだけでなく、従業員の個々のデバイスについてもセキュリティ対策を配慮せねばならないことを覚えておこう。
参考:
クラウドコンピューティング導入状況分析結果―クラウドコンピューティングと変化するITの役割
http://wp.techtarget.itmedia.co.jp/contents/?cid=11235
The pros and cons of using online storage to backup your data.
http://refugeeks.com/the-pros-and-cons-of-using-online-storage-to-backup-your-data/
http://www.telecomchannelblog.com/cloud-computing-and-telecommuting-a-match-made-in-the-clouds/