ビッグデータ時代の情報システム像: データ統合基盤はどうあるべきか?
国際化の進展、少子高齢化、リスクの多様化・複雑化、デジタル技術の浸透など、企業を取り巻く環境はめまぐるしく変化している。
他方、これを支える情報システムも統一性のないデータ、異なるサーバ、OS、ソフトウエア、統一性のないアプリケーション、一貫しないUI、人に依存してきた保守・運用など、変化対応力の乏しい、高コスト体質となっている。
この課題をどう解決すべきか?
データに着目する
この問題は企業経営にとって永遠の課題であり、1960年代のMIS(マネジメント・インフォメーション・システム)の時代からその解決が模索されてきているが、今日の特徴はあらゆるモノがつながる“ビッグデータ”にある。
モバイル機器やセンサなど急速な普及により、今日、企業の業務データは爆発状態にあるが、その処理体系は全く遅れている状況にある。
既存のERPやRDBMSでは手に負えないビッグデータを扱うための新たなデータ統合基盤はどのようなものか?
アプリケーションとデータの疎結合化
その道筋はズバリ、(1)アプリケーションからのデータ分離 (2)変化に強いデータモデルの提供 (3)データ駆動型の情報システムの構築――である。
(1)の「アプリケーションからのデータ分離」では企業内のすべてのデータを棚卸し、見えるかを行う、次いで冗長データの破棄、データ構造の整理と統合方針の策定、そしてアプリケーションとデータの疎結合化を図り最適化を行うことが重要である。
(2)の「変化に強いデータモデルの提供」では、ビジネスモデル、業務理解についてモデリング技法を用いてデータ構造、システム化の範囲と業務範囲、業務プロセスとシステム機能単位などについて整合性の検証を行う必要がある。併せてデータ辞書の共通化も図る必要がある。
データ統合の実践事例
ここでは実践事例としてY食品メーカー(1部上場)の生産管理データの一元管理化を挙げておく。
Y社では工場間で受注データをリアルタイムに活用できない、工場/取引先ごとの連携にプライオリティが置かれ、インターフェースが複雑化し、その結果、システム運用コストの増大を招いていた。
これに対して受注データを一元管理、連携インターベースを一本化することにより、生産計画の精度の向上・廃棄ロスの削減を実現し、運用コストの40%削減を果たしている。
また、通信機器メーカーのF社では部門間の個別最適により、受注・手配システムが複雑化し、システム運用コストの増大を招いていたが、段階的に疎結合化を図るとともに標準データモデルを整理し、スリム化、業務履歴の一元管理などにより、伝票の種類を90%削減するとともに、現場を見える化し、非効率な業務を改善した。
まとめ
目まぐるしく経営環境が変化する今日において、既存システムを活かしつつ、アジャイルな変化対応力を備えた情報システム基盤の実現が必要である。同時にデジタル化の進展により、経営・事業の競争優位を左右するデータを早期に整理、今日化することが鍵となる。データ統合には時間がかかる。すぐにでもこれらの方策に着手すべきであろう。
参考:
【富士通 記者向け勉強会】SIビジネス勉強会(データ統合基盤編)
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Christopher Chan via photopin cc