【第4回】 DX推進の行方
DX(Digital Transformation)という言葉もかなり聞くことになり、推進真っ只中という方もいらっしゃるでしょう。DXは、単にディジタル化をするためのツールを入れればいいと勘違いしている方もいらっしゃるかもしれない。もし、そのような考え方でDXを推進するのであれば、将来コストだけがかかってしまうという状態になってしまってもおかしくない。しっかり目的をおさえておくことが重要である。本稿では、DX推進の本来の目的について述べていく。
ディジタルへ移行する
DXすることによって我々がディジタルでの作業に移行しなければならない。これは非常に重要な点なのである。すべてのディジタルは一気通貫で実現できており、それに関わる人間もすべて同じディジタルツールの上で作業をすればそれだけでコストが下がるし、効率化にも繋がる。しかしながら最悪のストーリーとしては、一部一気通貫で実現できず、アナログな作業が残ってしまっている状態でDX推進をするのであれば、その一部の一気通貫で実現できない部分で余計な手間と損失を被ることになるであろう。この場合、DX前よりも悪化することもあり得るのだ。
早期にDXを実施して、上記のような失敗例が噴出し、アナログに蘇るという話もある。DX推進には、単なる自社と合致したツールを選び導入するだけでなく、その社内の人々が納得し、そのツールを用いて一気通貫で作業を完結させるという、新たな文化を醸成する必要があるのだ。
DX文化の醸成
DX文化を醸成するためにはどうしたらよいか、上層部の決断と現場のリテラシ向上の二つが実現されない限りうまくいかない。
DX推進にはなるべく例外があってはならない。その例外を作る可能性があるのが上層部なのである。上層部がもしDX推進に対して大きなリーダーシップと決断力があれば、社内の文化も一気に変わるだろう。DX推進はそれだけ大きな文化の入れ替えが重要なのだ。
現場のリテラシについては、言うまでもないかもしれない。現場がディジタルツールをつかいこなすことが第一である。慣れない人はどうしてもアナログに落としてから作業しがちであるが、それがコストを増大してしまう原因なのだ。DXの先では、我々はディジタルネイティブとして仕事をするべきなのだ。
DX推進後
DX推進後に大切なことがある。日々利用するディジタルツールには膨大なデータが格納されていることを見逃してはならない。そのデータを貯めるだけで、使わなければ意味がない。データ分析、可視化することにより、日々さらなる効率化、新たな価値の創造を行うことが必要だ。
私はDXが社内にデータサイエンスを用いた意思決定を根付かせるための第一歩であると考えている。
DXは社内の文化を変え、すべての社員がディジタルネイティブになり、ディジタルツールを十分に活用して業務を行うことで、大幅なコスト削減、効率化を図ることであると考える。しかし、それではDXを導入した際には大幅なコスト削減、効率化が見込めるかもしれないが、その後のコスト削減、効率化、価値創造には貢献できないのではないかと勘違いしている人がいるかもしれない。
そこから先はデータサイエンスの話となる。ディジタルツールを用いた結果、様々なデータが格納されているはずだ。これらのデータを使わないわけにはいかない。DXのよいところは、ディジタルツールによって業務についてコスト削減、効率化ができるだけでなく、ディジタルツールによりこれまでの行動、状況などがデータとして蓄積されることになる。これらのデータを日々分析、可視化し続けることが重要なのである。もしかするとデータ分析、可視化というのは1回やればおしまいと思っている方がいらっしゃるかもしれないが、それは間違いだ。データ分析、可視化というのは常時行っていくのだ。
データから見出される根拠
これまで、勘やコツで見抜いていた事象もすべてデータから明らかにすることが重要である。勘やコツも人間の重要の力なので大事なのは間違いない。しかしながら重要な意思決定を行う場合、それがデータから導くことができないのか、データから根拠(エビデンス)を見つけることが何よりも重要となる。
データから見出される根拠(エビデンス)こそが、意思決定の源泉である。社内の人々の多様性が大きくなっていく現代において、勘やコツでの意思決定はときには理解されないこともたくさんある。なぜなら、いわゆる常識というものがまったく人によって異なるからである。それに対してデータ分析、可視化から見出される根拠(エビデンス)による意思決定は、どのような多様な人々が集まる職場環境でも支持されるはずだ。
このように考えていくとDXはまだ入り口にしか過ぎない。我々の業務は社会の動きが急速に変化しているのと比例し、日々増大していくことは目に見えている。このように増大し続ける業務の中で、これまでのガッツや根性に任せて、現状のやり方のままで進めていくことがよいのであろうか、そうではないと考える。我々は、日々増大している業務をスムーズにかつ日々効率化し、社会の急速な変化に対応していかなければならないのである。DXは過酷な変化に対応するための第一歩である。
技術顧問
DXインテグレーションセンター®長
中西崇文